金額のインパクトは大きいにもかかわらず、
いくら給与を払っても、人の能力を会社の所有する資産にすることはできません。
また、期待と違うからといって、クビにしたり、給与を簡単に下げることもできません。
それゆえ、企業は人件費を増やすことに対しては、極端に慎重に対応します。
だから、人材への投資は、企業が業績を回復したからといって簡単にできるものではありませんでした。
その流れが、ようやく変わってきました。
景気は緩やかに回復しているといわれます。12月の日銀短観によると、2005年度の設備投資額は前年比9.1%増とのこと。
日経平均も回復しています。
多くの労働者にとってその実感がないのは、景気回復が雇用や給与という形で、まだ現れてはいなかったからです。
順番で言えば、リストラ→株価上昇→企業業績回復→設備投資増加→人的投資増加
という順番です。
いまやっと最後の、人の面で、景気回復のきざしが見えてきました。
経団連は14年ぶりに賃上げ抑制の姿勢を転換することになりました。
賃上げ交渉を容認したわけです。
また、若年層の労働力人口は減り続けています。
いよいよ本格的な「人不足」の時代がやってくると言えるでしょう。
不景気時にパート、派遣で凌いでいた企業が、ようやく正社員採用に踏み切る例も多数出てきています。
労働市場は、本格的に売り手市場(労働者側が交渉力をもつということ)になります。
もちろん、企業にとって「いい人材の確保」が生き残りの最大の要因です。
雇用を増やし人を育て、優秀な人材により企業の力を強化するという、
本来の企業の競争が、やっとはじまったようです。
終身雇用が崩壊した中、労働者側も、会社を選別し会社と交渉する存在になりました。
決して楽観してはいけませんが、リストラの嵐のあと、
やっと「人が資本」の時代が来たのだと思います。