2009年10月01日

なぜコンビニ本部とオーナが揉めているのか?

コンビニ業界の仕事をしたことがあります。
ここ20年で最も成長した業界の一つです。もうコンビニがないと暮らせない、という人も多いでしょう。組織の規模も右肩上がりに拡大してきましたが、今は少し落ち着いています。

最近はコンビニのニュースがたくさん目にとまります。
特に目立つのは、店舗オーナーさんとチェーン本部の対立です。
値引き販売や廃棄について、もめているのが報道されていますね。

それは、コンビニが最近になってルールを変更したから起きたわけではありません。昔からほぼ同じルールでやってきました。
ではなぜ最近トラブルが表に出るようになってきたのでしょうか?

簡単にコンビニ業界について解説したいと思います。
まず前提となるのは、コンビニ業界のビジネスモデルを支えているのは、「フランチャイズ」という仕組みです。

■フランチャイズ

1.お店を経営しているのは、お店のオーナー
チェーン本部(例えばセブンイレブンジャパンやローソンという会社)が、お店を経営しているのではありません。お店を所有・経営しているのは、お店ごとにいる、オーナーさんです。(チェーン本部が直接経営しているお店も一部あります)

つまり、皆さんの町にあるセブンイレブンのお店を経営しているのは、セブンイレブンジャパンではなく、別の会社や個人である(オーナーと呼びます)、ということです。
このことはコンビニを知る上でとても重要です。これが、フランチャイズシステムであり、イオンやヨーカドーなどのスーパーと違うところです。

オーナーは、お店を開くにあたって、セブンイレブンの看板や名前を使ったり、セブンイレブンのシステム(商品管理、物流、スタッフ教育などのノウハウやシステム)を利用することで、自力でお店を開いて運営するよりも効率的に店舗運営ができます。
だから、オーナーは本部に対して、最初は加盟金、その後は売り上げの一部をロイヤリティとして支払います。

セブンイレブン本部は、オーナーに対して、お店の運営のしかたを指導します。

本 部 :ブランド、運営システムをオーナーに貸し、店舗の運営を指導する
オーナー:店を所有、経営する

こういう関係にあるということは知っておいてください。
つまり、本部が全ての店を経営しているのではなく、それぞれの店は独立した会社や個人だということです。

■値引き・見切り販売はオーナーの権限

最近、「値引き販売」について、本部とオーナーがもめています。なぜでしょう?
(「見切り販売」は消費期限に近づいたお弁当などを安く売ることで、値引き販売と同じです)

まず、フランチャイズ制度において、お店はオーナーが経営しています。
そして、独占禁止法の大原則は、「モノの値段は、売る人が決めることができる」ということです。
コンビニで、売る人はオーナーです。

例えば、電器屋で買うテレビは、ソニーやシャープが値段を決めることはできません。
電器屋が値段を決めています。
だから、ソニーやシャープが言っている値段を「メーカー小売希望価格」と言っています。あくまでメーカーの「希望」でしかありません。

コンビニのビジネスでも同じことが言えます。
メーカーが作った商品を、本部の指導のもと、オーナーの店が仕入れて売ります。ということは、売る人=オーナーが、値段を決めることができ、本部は売る値段を決める権限はない、ということです。

本部には権限がないのに、値引き販売を禁じる(具体的には、値引きしているお店には圧力をかけて契約解除する)ことで、公正取引委員会も、「待った」をかけたわけです。

■昔から方法は同じ

ただ、昔から同じようにやってきました。値引きする権限はお店にあるということも、本部もオーナーも昔から知っていました。最近になって気づいたわけではありません。
だから本部も、オーナーに対して「値引き販売を禁止する」と明確に書面で通知したことはありません(ないはずです)。
本部には禁止する権限がないのですから、言えるのは「値引きしないようお願いします」というお願いだけです。
それに、店のオーナーも従ってきました。(一部は値引きの店もありました)。

では、なぜ最近になって急増したのでしょうか?
コンビニをめぐる環境の変化があります。

■昔は値引きしなくても売れた

コンビニの大きな特徴のひとつは「定価販売」です。安売りのコンビニってないですよね。定価で売れるから、利益率もいいわけです。
一方、スーパーやドラッグストアは激しい値引き合戦していますね。

じゃあなぜ定価で売れるのか?

まず第一の理由は、その名のとおり、コンビニエンス(便利)な場所にあるからです。遠くのコンビニって行きませんよね。

次に、ちょうどいい商品がおいていあるからです。
POSという単品管理のシステムによって、顧客のほしい商品を効率的に調べてお店に置くことができます。

■しかし、売上が落ちてきた

「便利さ」 で、人をひきつけたコンビニですが、厳しい環境の中、店の売上が落ちています。特に今期、コンビニ業界は過去にない苦戦を強いられています。理由はいくつかあります。

−不景気
消費者が価格にシビアになってきました。
コンビニは定価で売るかわりに便利さを売ってきたのに、「不便でも安いほうがいい」という消費者が増えた。
近くにコンビニがあるけれど、ペットボトルのお茶が150円。ちょっと向こうのスーパーだと120円で売ってるならそこまで買いに行く人もいる。自分でお茶を作って水筒で会社に持ってくる人もいますよね。
そこで最近はコンビにもPB商品をつくって値下げ競争に参加しています。当然売上は落ちてきます。

−コンビニ同士の競争
いま日本にあるコンビニは4万店を超えます。だいたい3000人に1店と言われていますので、日本にはほぼ満杯まで店ができた、ということでしょう。
それまでは、コンビニはエリアに一つだったのですが、複数あります。コンビニはチェーンが違っていても、基本的な商品が重複していますので、差別化が難しい業種です。(サントリーの伊右衛門は、あらゆるチェーンのお店にありますよね)
近くにローソン、それより向こうにセブンイレブンがある場合、それでも遠くのセブンイレブンに行こうとする人は少ない、やはり近いほうにいく、という傾向の強い業種です。
(※車で行くロードサイド店はまた別です。その場合、「入りやすさ、出やすさ」が、「近さ」以上のファクターになります)
同じ商圏に2店、3店が競合してきて、売上の維持が厳しくなってきました。

−他業種との競合
24時間スーパー、24時間弁当屋、薬以外の商品も多数扱うドラッグストア、これらは最近メキメキと力をつけている業種です。
そのどれもコンビニにとっては十分脅威となっています。あとは牛丼、中華料理などの低価格外食産業も厳しい競合です。

■売上が落ちて、仲間割れがはじまる

「値引きするな」と、昔から本部は言ってきました。
それに従ってきたのは、値引きしなくても日販50万円など、十分に売れたからです。

売上−仕入れ価格(※)=粗利です。 
(※廃棄分を除く仕入れ価格。これがオーナーを苦しめる制度です)

コンビニは、粗利をオーナーと本部で分けます。
一日の売上が約50万なら、粗利は約15万円です。
その程度であれば、お互いが潤って、特に不満もありません。

売上が落ち、その関係が変わってきました。
廃棄を負担するというコンビニの独特の会計方法によって、売上が落ちたときに、オーナー側の取り分のほうが大きく減ります。
本部は売上と利益が減るという程度です。一方、オーナーは一気に赤字転落というケースが出てきました。
オーナーは個人か小さな会社であることがほとんどですから、赤字が続くと会社がつぶれたり、借金が増えて自己破産するというケースもあらわれてきます。

■問題の本質は値引きではなく、「取り分」の偏り

本部が黒字でオーナーが赤字という状況が、多くのお店で起きれば、必然的に「粗利の分け方」そのものに不満が出てきます。
そこで、今回の値引き販売の問題が発生しました。
値引き販売することで、オーナーの取り分を確保しようという動きです。
コンビニの会計方法であれば、廃棄するよりも安く売ったほうがオーナーの取り分は増えます。
つまり、値引きそのものよりも、問題の本質は「粗利の取り分」をめぐる本部とオーナーの争いです。

■今後の方向性

現実的に一日の売上が40万円(※)を切るようになると、オーナーさんが利益をとっていくことが困難になります。
(チェーンごとにいろんな契約のタイプがあるので、一概には言えませんが)

そして、どんなビジネスでもそうですが、「片方だけが儲かっている」という状態が続けば、関係は崩れます。
そうなれば、その関係をやめてしまうか、お互いの取り分のルールを変えるしかありません。

◎「取り分」を変える
他の業界と同じように、今後コンビニの売上が飛躍的に伸びることはありません。
以前に比べて低い水準の売上で、本部とオーナーが共存できるように取り分を分けるルールを作りなおす必要があります。
ロイヤリティ(本部側はチャージと呼びます)会計の変更です。

以前より売上が落ちたといっても、一日1000人近い客を呼び、月に1000万円以上売れる業態はそれほどありません。
つまりコンビニそのものは力のある業態ですから、やめるのではなく、
オーナーの負担を減らすために、本部とオーナーとの粗利の分配方法を変えていくことになるでしょう。

粗利にかかるロイヤリティを下げる、廃棄を一部補填する、といったルール変更は、この流れに位置づけられます。

◎地域別、店舗別の多様化
いまやコンビニは地域のプラットフォームです。
お弁当屋であり、文具屋であり、書店であり、銀行であり、宅配業者であり、クリーニング屋でもある、
という非常にユニークなビジネスモデルを生み出してきました。

今後、全国均一のチェーンストアから、今後は立地に応じた個店ごとの店づくりが重要になるでしょう。
予想される方向性としては以下のものがあります。

・異業種との提携加速(外食、ドラッグストア等)
・PB商品、独占販売商品の拡充、割安感の訴求
・食品の安全、地産地消の推進
・24時間営業の見直し(深夜不採算店の時間営業化)
・通販と連動した受取機能の強化
・宅配サービスの拡充

いずれにせよ、既存のコンビニの業界を超えて、隣の業界のビジネスを奪いに行くような戦略にならざるを得ません。
コンビニ対ドラッグストア、コンビニ対スーパー、という闘い(と同時に連携も)が今後加速していくことは、間違いありません。
posted by career2.0 at 14:34| Comment(1) | TrackBack(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
一言言っておきますが、フランチャイズとセブンのようなチェーン店を誤解していますね。「看板貸し」である、ファミマなどのフランチャイズと違い、セブン-イレブンは、「自社社員」で構成します。要するに、一応「自社のお店を任せている店長」であり、独立採算のフランチャイズとは根本的にシステムが違います。当然、売上は本社で吸い上げ、成績に応じた給与を支払います。ですから、店舗閉鎖は店長権限ではなく、本社命令です。一方、フランチャイズのその他のコンビニは、看板貸しプラスシステム利用料が発生するため、ほとんどがバイトの面接も本社は関与しません。よくよく調べてから正確な記事を書いてください。セブンイレブンは、店長を「採用」という形で謂わば雇用しているんですよ。
Posted by Rado at 2014年05月20日 04:45
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。