前の記事(有報の読み方@)では、社員の情報から企業文化を読み解こうとしました。
今回は役員です。
有価証券報告書には、役員についても書かれています。
役員は、会社の経営陣です。
(役員の肩書きについては過去記事参照)
どのような人たちが経営しているのか知ることで、
会社の性格をつかみ、あなたのキャリアを想像してみましょう。
第4 「5 役員の状況」をみてみましょう。
ここでは、「役名」「職名」「氏名」「生年月日」「略歴」「任期」「所有株式数」
が、記載されています。
●ファミリー企業か?
まず、氏名をざっとみて、同じ名字の人がどれだけいるか見ましょう。
そして、余裕があれば、右端に書いてある、その人たちの持っている株式数もみましょう。
「第4 1株式等の状況 (5)大株主の状況」に大株主が記載されています。
役員、大株主の多くが同姓のファミリーであれば、それは明確にファミリー企業です。
同族経営をしている、いわゆるファミリー企業であれば、必然的に同姓の役員が多くなります。
一般的に、彼らが大株主でもあります。
上場企業にも、いわゆるファミリー企業はたくさんあります。
昨今、ファミリー企業の不祥事が話題になっているので、叩かれやすい存在ですが、
ファミリー企業が一概に悪いとは言えません。
ファミリーで強い価値観を守って、短期的な利益に一喜一憂することなく、長期的視野にたった投資ができます、
数年で交代するサラリーマン社長は、やはり短期の業績が必要ですし、ミスが怖い。
そういう短期の評価を気にしない、企業文化を大事にした経営ができるという、よい側面は、見落としてはいけません。
武田薬品、サントリー、大正製薬、村田製作所、堀場製作所等々、エクセレントなファミリー企業は日本に多数あります。
もちろん欧米にも多数あります。
トヨタも、豊田家を大事にしていますね。
ただ、そういう場合、あなたが入社した際に社長になれる可能性は、低くなります。
そこまで目指していなければ、大きな問題ではありません。
ファミリー企業であるということは、メリット・デメリットを含めて、認識した上で、入社することが大切です。
●年齢
若さは重要です。
若気の至りもありますが、若くなければできないことはたくさんあります。大きな社内改革は、若い風が必須です。
役員がだいたい50代後半より年上なのであれば、やはり年功序列の強い会社だと思います。
やはり若いうちに大きな仕事を任されることは難しいカルチャーだと思っていでしょう。
最近は古い大企業も、若手役員を任命しています。
やはり、このままではダメだ、という危機感の表れでしょう。
会社の人事制度、若手の登用の度合いを一部はかることができます。
●キャリア
役員の略歴があります。
ここではいくつかの会社の事情が明らかになります。
1.外の血を大切にしているか?
新卒で入社した人だけが役員になっている会社があります。
その場合、いくら中途採用をしていても、本質的にはプロパー社員がかわいい、
中途入社組は外様扱いされているというカルチャーがあると思います。
中途で入社を考えているのであれば、そこはチェックする必要があるところでしょう。
2.親会社、大株主の影響力はどうか?
役員の全てや大部分が、その会社の人ではなく、親会社出身者である可能性があります。
親会社の支配力が強い会社です。
その場合、どうしても子会社に入社した社員が役員になる道は険しいでしょう。
3.メインバンクはどこか?
銀行出身者が役員や監査役に入っている場合があります。
過去ずっとその銀行出身者が役員に入っているのであれば、メインバンクとその影響力が分かります。
管理系部門への入社を検討しているのであれば、チェックする箇所です。
4.出世コースはどこか?
役員の出身部門をみるとわかります。
技術系なのか、営業系なのか、メーカーの場合はその二つは大きな
過去の有報から歴代の社長などをみていると、ずっと似たようなキャリアを辿っている場合があります。
それが出世コースと言うことで、若手の優秀な人間(幹部候補)をどのようなコースで育てていくのか、示していると思います。
逆に、冷遇されている部門もあるでしょう。
各部門の存在感・発言力が役員のキャリアから、かいま見えます。
5.役員の任期は?
役員任期があまりに長い場合は、組織が硬直化して、若手に息苦しさを与えている可能性もあります。
逆に短期的な業績に右往左往せずに、企業を育てようという意志が強い場合もあります。
例えば親会社から社長が来ていて2年ごとに変わるような場合は、
短期的な業績志向が強く、短期で目に見える成果は出ないが、長期的な成長のための投資がしづらい可能性があります。
どんな情報でも、いい面と悪い面があります。
最終的には、聞いて、見て確認をするしかありませんが、
有報からある程度、企業文化の可能性を読み取ることもできます。