それだけ、悩ましい問題なのだと思います。
就職の企業選びは一生の問題ですから、納得できるまで悩むべきですし、悩みぬいた結果、内定を辞退することも仕方ないことだと思います。
ただし、相手の企業はもちろんいい思いはしませんから、礼をつくして、ていねいに断りましょう。
そういうことを書きました。
その後、
「じゃあ具体的にどうやって言えばいいのか」
「電話がいいと書いているがメールや手紙ではダメなのか?」
といったお問い合わせをいくつか頂きました。
具体的な方法をお答えしたいと思います。
@「電話で伝える場合」
「内定辞退を決めたら、まずは、電話で一報を伝えるべき」と、前回の記事で書きました。
電話は緊張しますが、書類だけで済ますべきではない事柄なので、勇気を出して電話しましょう。
電話で伝えるばあい、静かな場所で、あせらず、ゆっくり話しましょう。そのためにも、手元に台本を置いて話すことをおすすめします。
(例)
○○大学の●●です。
先日は内定を頂き、ありがとうございました。
色々と検討しまして、大変非常識なことで、本当に申し訳ないのですが、
今回、御社の内定を辞退させていただきたいと思い、お電話いたしました。
(理由などを質問される可能性があります。その説明は用意しておきましょう。その説明の間にも、「非常識ではありますが」と挟んで、お詫びの気持ちを出しましょう)
大変申し訳ございませんでした。
こうやって、お詫びの気持ちを繰り返し伝えましょう。
ポイントは、ひたすら繰り返し詫びることです。そこまで謝られたら、あまりキツいことも言えないな、と思うくらい詫びることです。
謝罪の目的は「謝罪の言葉を伝える」のではなく「必死に謝ろうとしている姿勢を伝える」ことにあります。この微妙な違いを取り違えると、火に油を注ぐようなことになります。
その後「内定辞退の書類を送ってほしい」など相手の指示があると思いますので、従いましょう。
A「手紙を送る場合」
手紙の場合は、到着までに日数がかかりますので、あまりおすすめできません。まず電話で伝えて、その後書類を送るのがよいでしょう。
例えば会社を辞める時、テレビドラマの一シーンのように「いきなり辞表を叩きつける」ような場面はめったにありませんし、それはマナー違反です。まずは、上司に直接会って、その意志を伝えます。そのあとで辞表を正式に提出するという流れが、常識的とされています。
一般にビジネスの世界で、目上の人に対していきなり書類を送りつけるのはマナー違反です。「こういう事情でこういう書類を送ります」と事前に口頭で説明するのが、マナーです。
理不尽、回りくどい、面倒と感じるかもしれませんが、仕事では必ずそのほうがスムーズに進みます。
こういう細かいことを誠実にできる人を、仕事ができる人、といいます。
就職活動では、細かい敬語などを覚えるよりも、できるだけビジネス界の基本ルールを知ってほしいと思います。企業側の常識を知ることで、企業とのやり取りがスムーズにいきますし、入社後も早く一人前になれるでしょう。
内定辞退も、企業側の常識的なルールにあわせて、書面をいきなり送りつけるのは避けましょう。
実際の文書の書き方ですが、宛名等の書き方は、別記事「書類送付状の書き方」に書いている例を参考にして下さい。同じで構いません。
文章は、あまり長くなっても読むほうが面倒ですし、短かすぎると誠意が伝わりません。ちょうどよい分量が重要です。
(例文)
拝啓 貴社益々ご清祥のことと、お慶び申し上げます。
このたびは、貴社の採用内定を頂戴し、誠にありがとうございました。
私にとっては大変光栄な話でしたが、悩んだ結果、○○と考え、大変非常識ではございますが、今回の内定については辞退させて頂きたいと考えております。
貴社の皆様には、お時間を割いて選考をして頂いたのに、期待に応えられず、誠に申し訳ありません。
誠に無礼とは存じますが、どうかご容赦頂ければと存じます。
今後とも、貴社のご発展を、心よりお祈り申し上げております。
敬具
○○の理由の部分は、「〜の業界で働きたいという思いがどうしても強く」とか、「別の分野で自分を成長させたいと考え」など、具体的な企業名を出す必要はありません。どうしても言いたくなければ、「一身上の都合により」でも構いません。
いずれにせよ、相手が感情的にならないように、きちんと誠意を持ってお詫びすることが重要です。