2008年04月15日

面接準備の誤解 〜 説得力について

面接の準備といえば、たいていの人が「できるだけ多くの想定質問に対して、説得力のある回答を用意しておくこと」というイメージを持っていると思います。
面接の前日まで、想定質問とその答えをノートに書き、より洗練された文章に直していく。そんな準備に時間をかけている人がいますが、大きな誤解があると思います。

「少しでも説得力のある内容を考えたい」という気持ちは理解できますが、まず知っておくべきは、「説得力」は「話す内容」だけから生まれるものではない、ということです。


面接は、あなた自身を表現して、面接官を納得させる場所です。そのために必要なものは、話の内容やセリフの文章だけではありません。
当たり前のことなのですが理解されていません。身の回りにも、あるいはテレビをつけても、「いいことを言ってるけど、なにか説得力がない人」と、「たいしたことは言ってないけど、納得させられる人」がいます。そして、人は後者の意見を聞き、後者を信用します。
同じ芝居の脚本でも、演じる人によって説得力が大きく違います。同じ曲でも、演奏する人によって受ける感動は大きく違います。同じ素材でも料理人によっておいしさには格段の違いがあります。


面接も全く同じです。同じ内容を話しても、納得感のある人と説得力の乏しい人がいます。全く記憶に残らない人もいます。
そもそも、9割の学生さんは、「大学時代に打ち込んだこと」や「自分の性格」などの内容に大きな違いはないと思いますし、採用側もそこに特別な独創性を求めていません。(過去記事「すごい経験幻想」)


では、相手を納得させ、説得するために必要なものは何か?
私は、3つの要素で説得力がつくられていると思います。

1.バックグラウンド


2.表現
  −服装・メイク・髪型などの外見
  −表情・視線・声・姿勢・しぐさ・動き
  −口ぐせ、話すスピード・テンポ
  −話す順番、選ぶ言葉、抑揚など


3.内容

一般的な就職活動の面接において、説得力を生む要因の8割以上は、1の「バックグラウンド」と、2の「表現」だと思ってください。3の内容そのものは、2割以下です。「表現」と書いていますが、心理学の世界では「ノンバーバル(非言語)コミュニケーション」と言います。

1.バックグラウンド
履歴書や応募書類の内容です。「その人の経験」が説得力を生みます。


例えば面接で、東大生が「机に向かって勉強するのが好きではありません」と言うのと、無名大学の学生が同じことを言うのとでは、意味がちがうどころか、全く逆の意味に聞こえます。


話す人のバックグラウンドが、言葉の内容以上の意味を生み出します。それが説得力を生みます。私たちが、すぐれたスポーツ選手や、著名な経営者、カリスマアーティストが言う「夢を持とう」といった、よく考えれば「普通の一言」に感銘を受けるのも、そういうことです。言葉ではなくバックグラウンドを聞いているのです。

ただし、履歴書という形ですでに提出しているので、面接の準備ではありません。


2.表現

■表現によって、内容は何倍にも輝く


面接の準備は、2「表現」と、3「内容」を良くすることだということになりますが、重視するべきは2「表現」です。
なぜなら、「表現」は楽器の演奏やスポーツなどのように、「繰り返し練習しなければ決して上達しない」ものです。

志望動機など話す内容は10分もあれば考えられます。しかし、「表現」は、面接までに何時間、どのような練習をしたかが問われます。

どんな声のトーンで、どこを見ながら、どんな表情で話しているのか?
スピードは適切か?早口になっていないか?
変な口ぐせは気づかないうちに入っていないか?
相手が内容よりもそっちが気になってしまう、変なしぐさ・動きはないか?
話す順番は理解しやすいか?大事なメッセージを強く、その他を抑えて話せているか?


チェックするポイントは、たくさんあります。それを面接の前日に確認しても、本番で実践することは不可能です。面接という緊張した状態でも、自然に上手な表現ができるようになるには、何十回、何百回という練習が必要です。逆に言えば、練習すれば誰でもできます。


■「話す文章」と「書く文章」は違う

また、文章そのものにも、多くの学生さんには誤解があります。読んで説得力のある文章は、そのまま話せば説得力があるということではありません。紙に書いた文章を、「話すための文章」に変換する必要があります。その変換をしていない学生さん(逆もあります。口語用の文章で紙に文章を書いている人)が多いと感じます。


例えば、サークルで、チームが負けている原因を分析した経験について説明するときに、文章であれば、

  「チームの敗因を、メンバー全体のミーティングを通じて分析しました」

と書けばいいです。でも面接で話す時にそのまま読んでは説得力がありません。口語用に言葉を選びなおします。


  「なぜチームが勝てないのか? その原因を、メンバー全員で集まり、話し合い、分析しました」

としたほうが、耳で聞く相手は理解しやすいです。こういう準備は、できていますか?

■「表現」の練習にもっと時間を割くべき

紙にセリフを書いておくのは、面接準備の約3%が終わったにすぎません。それで面接準備完了と思うと、決していい面接はできません。もっと時間をかけて準備することがたくさんあります。

音楽家が演奏会に向けて、譜面を読んだだけで「準備ができた」とは言わないのと同じです。それをどう表現するのか悩み、繰り返し練習して、その都度表現を修正し、はじめてすぐれた表現に達するのです。
サッカーの本をいくら読んでも、試合でシュートは打てません。何度も実践形式の練習をしなければ、決してシュートは上達しません。

だから「面接の準備」といって、ずっと面接用のノートと向き合ってる人がいますが、何よりもやるべきことは、「表現」の練習です。話す練習ももちろんしていますが、明らかに量が少ない。考える時間と、表現する練習の時間とのバランスが悪いと思います。

私のところに相談に来られる人やOB訪問に来られる人の中に、ノートにびっしり文章を書いて暗記しているのに、会って話してみると表現力が足りない人がたくさんいます。それほど文章を考える時間があるなら、表現の練習にまわすべきです。非常にもったいない。何度も話す練習をしなければ、決して面接は上達しません。即席では説得力を生まないのです。
そんな人に、いくつか表現力を向上させるポイントをアドバイスをすると、数分で確実に改善します。面接で実践するためには、それを繰り返し練習して自然にできるようにするだけです。スポーツと同じです。


もちろん、よどみなくペラペラ話せ、ということではありません。いわゆる「口達者」と「説得力」は別次元のものです。

アメリカ大統領選を見ると、候補者は相手を自分の空気に引き込み、説得することに全身全霊を傾けています。そのエネルギーたるや、日本の政治家の比ではありません。そして、非英語圏の私たち日本人すら説得してしまう力を、彼ら彼女らのスピーチから感じます。たとえ英語の内容がわからなくても、説得力があると感じる人も多いのではないでしょうか?
説得力が、言葉の内容から生まれるだけのものではないことを、海の向こうで証明しています。


では表現力を磨こうといっても、自分の話しかた・表現力を客観的に見ることは難しいです。
ここで繰り返し言っていますが、自己分析ではなく、他人に素直に意見をもらいましょう。
「自分のことは自分が一番よく知っている」というのは、ビジネスの世界では幼稚な態度でしかありません。
他人の意見に真摯に耳を傾け、必要なものを受け入れることは、会社組織で生きていく人にとって、効率よく成長する近道です。
社会人とできるだけ多く話しましょう。そして、意見をもらいましょう。自分で悩むよりも成長のスピードは驚くほど速いです。

posted by career2.0 at 18:29| Comment(2) | TrackBack(0) | 就職活動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。インテリジェンス管理職にて在籍するかっしーと申します。近く起業を踏まえて学生や若い人たちとの交流も図る上で、貴殿のブログは大変参考になりました。キャリアコンサルタントとしてもいろんな面で活きた情報・知恵として共有できればと思います。
Posted by かっしー at 2008年04月24日 11:46
かっしーさん、コメントありがとうございます。
仕事の都合で更新もままならないですが、ぜひよろしくお願いいたします。ご不明な点は遠慮なくご質問下さい。
Posted by career2.0 at 2008年04月24日 12:28
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